長さ3.6mの長〜いそうめん

和泉手延長そうめん
間杉手延製麺所/愛知県安城市
2022年7月号掲載
「半生もどし」でツルツル食感に
「安城七夕まつり」で知られる愛知県安城市に昔ながらの手延べ製法でつくられるそうめんがある。麺の長さが約3.6mにも達する和泉手延長そうめんがそれだ。安城市和泉地区は江戸時代、水利が悪く、麦しか栽培できず、そうした麦農家の副業としてそうめんづくりが広がったと伝えられる。
昔の尺貫法で2間(約3.6m)の長さがあった「貫」と呼ばれる木造家屋用の水平材を、麺を延ばす道具に使ったことからこの長さの麺が生まれたといわれ、長く延ばすことで、独特の強いコシを生み出す。最初、うどんぐらいの太さだった麺を直径1㎜ほどまでにする延ばしの作業は、2本の竹の棒を使い、吊るしたそうめんを延ばしていく延ばしの作業は、優しくリズミカルで、まるで踊っているかのようだ。
また、いったん乾燥させた麵を加湿して半生状態にする「半生もどし」と呼ばれる技法が使われ、半生状態にすることで、麺の表面が滑らかになり、ツルツルの食感が生まれるという。かつては、「そうめん風」と呼ばれた三河湾からの湿った風を利用していたが、現在は加湿器を使って戻している。冬場につくることが多いそうめんだが、当地では夏場の6月から8月が最盛期、コシの強さと滑らかさを併せもった当地ならではのそうめんだ。
Profile:間杉手延製麺所
現代表の間杉秀昭氏が1974(昭和49)年に創業。そうめんの製造は6月から8月のお盆明けごろまで。ほかに、ひやむぎやうどんも製造。妻ミチ子さん、息子の宗臣さん、娘の升結(まゆ)さん、その夫の亮さんと家族で切り盛りしている。