お燗をしておいしい酒

純米カップ酒「悠々燗々」
玉櫻酒造/島根県邑智郡邑南町
2023年12月号掲載
熟成過程で滋味を蓄えた純米酒
薄く番茶のような色合いが印象的だ。島根県邑智郡邑南町にある玉櫻酒造が造る燗酒向き純米カップ酒「悠々燗々(ゆうゆうかんかん)」だ。無ろ過で二度の火入れにこだわった純米酒は、熟成過程で滋味を蓄え、趣を増しながら色づいていくのだという。
ちなみに名前の由来は、「悠々閑々(悠々緩々)=ゆったりとしている様子」にお燗酒の要素を入れた造語。慌ただしく落ち着かない世の中でもお燗酒を飲んで、自然と心を和んでほしいという造り手の願いが込められている。
「熟成酒を冷やして飲むのはおすすめしません」という同蔵5代目の櫻尾尚平氏と弟の圭司氏。常温でも十分旨みを感じることはできるが、燗をする事で真価を発揮するのだという。全量を地元産契約栽培米を使用し、糖分が全てアルコールに変わるまで発酵させる完全発酵。しっかりとした旨みをもちながらも自然な味わいが自慢だ。一口目は素っ気なく感じても飲み進めるにつれ、滋味の豊かさが感じられる。また、不思議とお腹も減って料理もすすむ。 邑南町産の米から生まれた、温かいご飯のような包容力を持つ酒は、造り手のように可愛くたくましいクマが目印だ。
Profile:玉櫻酒造
8割が森林という島根県邑南町、現在も河川には特別天然記念物であるオオサンショウウオが生息し、田んぼが広がる里山だ。この地で1892年創業、現在杜氏を務めるのは5代目蔵元の櫻尾尚平氏と弟の圭司氏。原料米由来の味の違いを楽しむため、できるだけ単一品種の米で仕込み、ブレンドは行わず完全発酵、無ろ過、熟成にこだわる純米酒を提供。料理に合う、燗酒として楽しむ酒を主軸に、飲んで落ち着くような包容力を持つ酒、元気になるような生命力を感じる酒を目指している。